出典:新日本プロレスワールド

まとめ

飯塚高史引退!プロレスの魅力と魔力が詰まった飯塚劇場、ここに完結![レスラークロニクル]

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出典:新日本プロレスワールド

試合が終わった後の空っぽのリングに、鳴り止まない飯塚コール、誰も帰らない観客。

長くプロレスを見ているが、こんな光景は見たことない。

2.21 NEW JAPAN ROAD ~飯塚高史引退記念大会~ の試合後の光景である。

 

試合が不満で帰らない観客っていう事態は数多あるが、特定の選手名をコールしてその先を期待するなんて、まず見たことない。

今日の最後の飯塚コールは言ってみればアンコールのようなものなんだろう。

もう一度見たい、これでサヨナラは嫌だ、最後に声が聞きたい、引退が早すぎる、今までありがとう、ファンのすべての声が飯塚コールとなって、後楽園を揺り動かした。

控室での飯塚選手はレスラー冥利に尽き、万感の思いだったに違いない。

しかし、カーテンコールは実現しなかった。

これが飯塚選手の答えだ。

 

思えば、飯塚選手を知ったのはいつだろう。

昭和の時代、長州選手や藤波選手の横に真面目そうなイケメンレスラーがいた。

地味ではあるが、大きな体に確かなレスリング技術、子供ながらにこの人は次世代のエースに違いないと思った。

しかし、ボタンを掛け違えるが如く、いろいろなチャンスに見放され続けた。

気がついたら、飯塚選手は一周まわって怨念坊主になっていた。

 

もし今の時代に怨念坊主ではない飯塚孝之がいたらどうだろう。

派手な選手が多い今の新日本なら、逆に昔の飯塚スタイルはブレイクしたんじゃないだろうか。

石井選手や柴田選手のように海外人気も高かったんじゃないだろうか。

しかし、現実にイフなどない。

時代に見放され続けた飯塚選手は、まるで今までの悔しさを全て怨念に変えてしまったような姿になった。

寡黙で実直な飯塚スタイルが真逆に振り切れた時、怨念坊主はあらわれた。

見た目は正反対だが、怨念坊主は寡黙で実直な飯塚スタイルそのものだ。

 

怨念坊主が喋らないわけじゃない、飯塚選手が怨念坊主だから喋らないのだ。

 

昔から飯塚選手は言葉に頼るプロレスをしてこなかったのだから。

 

 

過去の飯塚選手の試合のまとめはこちらからどうぞ。

飯塚高史の一歩踏み出す勇気がハンパない件、ウガァァァァァァァ![レスラークロニクル]

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飯塚高史のココロをめぐる冒険!真壁が、野上アナが、オカダが、タイチが、後藤が、天山が、みんなでつくる引退試合の物語。

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最高級のワイシャツ用意した野上アナ。

飯塚選手の引退試合で絶対に忘れてはいけない人物がいる。

それは天山選手でもなく、鈴木選手でもない。

間違いなく、実況の野上アナだ。

飯塚選手との抗争の歴史がある以上、こればかりは野上アナ以外の選択肢はない。

僕は野上アナの実況が好きだ。

時に感情的になりすぎる実況はあまり好みでない人もいるだろう。

でも、レスラー入場時の野上アナの前口上は素直に素晴らしいと思う。

緻密な情報と練られた言葉、選手の歴史を踏まえてベビーだろうとヒールだろうと熱く語ってくれる。

内藤選手がIWGPを初戴冠したときの前口上が有名だが、飯塚選手の引退試合にあれが聞けないなんてありえない。

出典:新日本プロレスワールド

セミまで実況を続けた清野アナに変わり、メインイベント前に大ノガミコールで野上アナが迎えられた。

後楽園に詰めかけたファンも全員知っている。

飯塚選手の引退試合のプロレスに、野上アナが欠けてはいけない重要な人物だということを。

飯塚選手の入場時の野上アナの実況を書き起こした。

この曲が流れるたびに、いつも恐怖に襲われていました。でもこれが最後だと思うと、複雑な感情が胸に押し寄せてきます。昭和61年に始まった飯塚高史のプロレス人生、平成の終わりに幕を閉じます。パートナーを務めるのは鈴木みのるとタイチ。そして飯塚が姿を見せました。今日も花道を歩かない!ひとつの空席もない超満員の後楽園の中をいつもと同じように、掻き乱しながら入って参りました。いろんなことを思い出します。正直申し上げまして嫌な記憶しかございません。なぜ悪に染まったのか、なぜ私は襲撃され続けたのか、その理由も教えてもらえないまま終わるのでしょうか。ずっと知りたかった、ずっと話したかった!一度でいい、飯塚高史と話がしたい!飯塚高史の声を聞きたい!10年10ヶ月願い続けてきたーーー!飯塚ーーー!マイクは離したくないーーー!ブチッ!ビリビリ!

飯塚選手に襲われた時、野上アナがマイクを離さなかったためにマイクが壊れてしまうアクシデント。

でも飯塚選手の引退試合の実況として、絶対にマイクを離したくなかった野上アナの意地。

東スポのインタビューで語っていたが、野上アナは破られるとわかっていながら、最高級のワイシャツと青義Tシャツを用意してきた。

それが野上アナの精一杯の贈り物だったのだろう。

出典:新日本プロレスワールド

出典:新日本プロレスワールド

あっという間にネクタイだけの上半身裸になってしまった野上アナ。

いつもなら笑ってしまうような姿なのだが、今日は戦闘用のコスチュームに着替えたような気がして、ちょっとだけカッコ良かった。

 

一方、天山選手の入場時の野上アナの実況も書き起こした。

かつての友情タッグに思いを馳せます。飯塚の引退が発表され、真正面から気持ちをぶつけてきました。マイクを握り友情復活を叫び続けた天山広吉に対して、聖地後楽園が大天山コールで迎えます。世紀の裏切りがあって以降、実に10年を超える因縁があります。憎しみの方が大きい、でもやっぱりほっとけない、友情Tシャツを身にまとった天山広吉。一瞬だけでもいい、目を覚ましてほしい、しっかりプロレスを締めくくってほしい!最後まで諦めへん、今度は俺がお前を救う!ラストチャンスに全てをかけます、飯塚、飯塚戻ってこい!天山広吉リングイン!

天山選手の気持ちを代弁するような実況だが、途中からは野上アナの気持ちをぶつけているようでもあった。

野上アナの実況を聞くたびに思うのは、プロレスは選手だけじゃなく、そこに関わるスタッフも一緒になってプロレスを作っているということ。

野上アナの実況があることで、飯塚選手の引退試合は2倍にも3倍にも深みを増す。

これだけでももう充分お腹いっぱいだし、すでに泣いているのだが、引退試合はこれからだ。

 

 

先輩へ贈る天山の気持ちと、同世代へ贈る鈴木の気持ち。

試合前に天山選手がいつもとは違う必死の表情でマイクをおこなった。

出典:新日本プロレスワールド

飯塚さん! 今日で引退するんですよね!? 最後に、もう1回、元に戻って下さい。飯塚さん! 飯塚さん!

引用:新日本プロレスリング公式

今までのギミックがまるでなかったかのように、レスラーとして尊敬する飯塚先輩に「さん」付けをして、素直に思いの丈を叫ぶ天山選手。

友情タッグを組んでいる時は「飯塚さん」と呼んでいた天山選手。

なりふり構わず、飯塚選手の心に飛び込もうとする天山選手だが、それぐらいでは飯塚選手にはまだまだ届かなかった。

試合はそのまま始まるが、リングインした飯塚選手に観客から大イイズカコール!

ちょっと戸惑い気味の飯塚選手。

出典:新日本プロレスワールド

ちょっとでも長く飯塚選手を見たいと思うファンの願いを感じとるように、飯塚選手一人で3人を相手にするようなローンバトルが続く。

途中フェイスガードを外した飯塚選手は悔いのないように天山&矢野&オカダ組の頭を食べ尽くす。

ロープ際で飯塚選手が天山選手の左手に噛み付いた時、鈴木選手が天山選手の右手に噛み付いた。

いつもなら関節を決めるところをあえて噛み付いた。

鈴木選手流のイキな餞別だ。

50歳を過ぎたおじさん二人が猛牛肉を食べ尽くす、少し変わった贅沢な光景である。

出典:新日本プロレスワールド

 

オカダを相手にレスリングを楽しむ飯塚高史。

飯塚選手と1対1になったオカダ選手はレインメーカーを決めにかかるが、それをかわす飯塚選手。

今度はオカダ選手が得意のドロップキックを決めにかかるが、飯塚選手はドロップキックをすかして、魔性のスリーパー。

出典:新日本プロレスワールド

コーナーポストを利用していち早く脱出したオカダ選手は再びレインメーカーを決めにかかる。

しかし飯塚選手はレインメーカーを切り返して再び魔性のスリーパー。

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魔性のスリーパーだけは決められたくないオカダ選手は、素早く回避してドロップキックで脱出。

三たびレインメーカーを決めにかかったオカダ選手に対して、飯塚選手はレインメーカーを往年のビクトル式膝十字固めで切り返す。

出典:新日本プロレスワールド

ロープに逃れたオカダ選手に対して飯塚選手はブリザードスープレックスの体勢に移行。

出典:新日本プロレスワールド

なんとかオカダ選手が脱出して天山選手にタッチ。

 

この一連の攻防はまさに飯塚選手の技の歴史そのもの。

ブリザードは不発に終わってしまったものの、引退寸前のレスラーとは思えないぐらい見ごたえのある攻防であった。

 

この引退試合のカードにオカダ選手が入っているのがずっと理解できなかった。

真壁選手や小島選手など飯塚選手に縁深いレスラーが他にいっぱいいるからだ。

しかしこの攻防を見て全てが理解できたような気がした。

完全に推測だが、飯塚選手もまた天龍選手と同じように、最後の最後に新日本最高傑作のオカダ選手と戦ってみたかったのではないだろうか。

オカダ選手にどれぐらい通用するか、飯塚選手のレスラーとしての欲が最後にほんの少し出てしまったんじゃないだろうか。

オカダ選手が相手だったからこそ、膝十字やブリザードを試してみたくなったに違いない。

 

蛇足だが、飯塚選手のビクトル式膝十字固めは、足を挟んだ体勢から前方に一回転するのが正式なやり方だったと思う。

出典:新日本プロレスワールド

後方に倒れてしまったのは恐らく体勢が崩れたのだと思うが、もしかしたら後ろのパターンもあったのかもしれない。

できれば、前に回転する往年のビクトル式膝十字固めが見たかったが、それはいくら何でもわがまますぎるお願いだろう。

 

泣き叫ぶ天山とファンの大声援に飯塚高史が動いた。

試合は天山選手と飯塚選手の1対1の戦いに収束していきます。

天山選手が得意のブレーンバスターを決めた後、何とも言えない表情をするのだ。

出典:新日本プロレスワールド

この時の野上アナの実況も胸に響く。

天山が思いを込めます。再三にわたるモンゴリアンチョップで飯塚の心の扉を開けようとしています。二十歳でデビューして以降、闘魂三銃士の影に隠れ、第三世代の波に押された、決してスター街道とは呼べない道を、しかし愚直に真面目に歩んだ22年間でした。そこからのヒールターンは知っている。でもあの時の、あの時の飯塚を天山は忘れていない!思いが込み上げてきます。天山が、天山が、目に涙を浮かべているのか!

裏街道を歩いてきた飯塚選手を天山選手はよく知っている。

誤解を恐れずに言えば、友情タッグは新日本から必要とされなかった二人のタッグに他ならない。

蝶野選手のパートナーという役割以上のものを見せることができなかった天山選手と、結果を出せないまま怪我に泣かされベテランになり本隊の居場所がなくなってしまった飯塚選手。

だからこそ、友情タッグは熱かった。

居場所のない二人が居場所を見つけるために組んだからだ。

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試合は、鈴木軍の介入により、ついに飯塚選手の魔性のスリーパーが天山選手に決まる。

会場からは大落とせコール。

さっきまで天山コールが上がっていたが、今回ばかりは落とせコールでも致し方ないだろう。

でも上の画像をよく見ると、先輩が後輩を抱きしめているようにも見えなくない。

飯塚選手の魔性のスリーパーという名のハグのプレゼントだ。

 

味方のカットで何とかスリーパーを脱出した天山選手だが、飯塚選手は最後の切り札アイアンフィンガーを取り出す。

しかしここで天山選手はグシャグシャな顔で、ガムシャラな説得を試みる。

天山選手のこの表情を見て何も感じない人がこの世にいるだろうか。

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飯塚選手もこの試合初めて動揺する。

怨念坊主が今までに一度も見せたことのない人間の苦悶の表情だ。

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しかし、飯塚選手はやはりアイアンフィンガーを振りかざして天山選手に攻撃する。

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この時、野上アナが本気の絶叫をする。

もう実況ではない魂の叫びだった。

あんな表情をする天山選手をまだ襲うのか、飯塚選手だって動揺したじゃないか、これでもダメなのか、アイアンフィンガーだけはやめてくれ、全ての気持ちが混ざり合ったプロレスの当事者の叫びだ。

野上アナも実況席で確かに戦っていた。

今でもこの時の野上アナの絶叫が頭から離れない。

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アイアンフィンガーをギリギリでかわした天山選手。

そこから矢野選手とオカダ選手のサポートにより、天山選手がダイビングヘッドを決行する。

その後、必死に飯塚選手に呼びかけ、最後の友情Tシャツを飯塚選手にかぶせる天山選手。

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その友情Tシャツと飯塚選手に最後の天山プレスを決める。

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これでついに引退試合の勝敗が決まった。

よく見ると最後の最後、天山選手は飯塚選手に体をつけていない。

引退試合の最後に天山選手は自分の体を押さえつけるようなことはしたくなかったのかもしれない。

勝ちたかったわけじゃない、戻ってほしかっただけなのだ。

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野上アナもこの表情。

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餞のムーンサルト!飯塚に思いは届いたのか!史上最悪のプロレスラーに見舞った最高に熱いムーンサルト!

 

試合後、必死の説得を続ける天山選手についに頭を抱える飯塚選手。

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天山選手はファンの声援を煽りながら、飯塚選手に気持ちをぶつけるこの表情。

出典:新日本プロレスワールド

天山選手のこの表情が飯塚選手のプロレスをフィクションからノンフィクションに変えている。

プロレスがプロレスの枠を飛び越えてしまった瞬間だ。

リアルな感情が狂人というギミックを貫いてしまった。

この瞬間があるからプロレスはやめられない。

 

天山選手が差し出す右手に、飯塚選手は長い葛藤のあと、ワナワナと右手をさし伸べ始める。

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そして、歴史的瞬間!ついに飯塚選手が動く!天山選手も驚愕!野上アナも歓喜!

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しかしハグをしようとした天山選手に噛み付き攻撃。

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いつの間にかリング上には鈴木軍があらわれて、飯塚選手がとどめのアイアンフィンガーを天山選手にブチかまし、友情タッグもここで潰える。

出典:新日本プロレスワールド

 

天山選手の必死の説得とファンの大声援を受け、一瞬だけ正気を見せて天山選手と握手した飯塚選手。

飯塚選手からしてみれば、握手する必要はなかったかもしれない。

最後の最後まで、寡黙で実直な飯塚スタイルに裏付けされた怨念坊主をやりきったのだから。

でも、ここまで盛り上げてくれた天山選手と、引退試合の後楽園を満員にしてくれたファンのために、感謝の気持ちを込めて自らの意思を譲歩してくれたのではないかと思う。

これがギリギリの飯塚選手の譲歩。

今のスタイルは譲れない。

絶対に譲れないけど、最後の最後に自分の意思を少しだけ曲げてくれた。

みんなのために。

僕はそう信じてる。

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鈴木軍のエピローグ。

そのままリングを降りようとする飯塚選手に対し、タイチ選手が一言。

オイ、飯塚!! 飯塚、待て、この野郎!! お前よ、ホントに引退するのかどっちなんだよ!? 最後ぐらいテメェの口からハッキリ言え、この野郎!!

引用:新日本プロレスリング公式

しかし、タイチ選手の声など全く聞くことなどなく、会場を練り歩きながら退場しようとする飯塚選手。

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すると、今度は鈴木選手がゴングを持ち出しテンカウントゴングを鳴らす。

出典:新日本プロレスワールド

それでも飯塚選手は全く気にする様子もなく退場する。

そしてリングに残ったアイアンフィンガーを持ち帰るタイチ選手。

出典:新日本プロレスワールド

最後は、鈴木選手の粋な計らいでテンカウントゴングの引退セレモニーを足早に完遂。

さらにタイチ選手がアイアンフィンガーを受け継いだことで、飯塚選手の引退を点から線につなげた。

鈴木軍の切れ者二人が引退試合にさらなる深みをもたらしてくれた。

 

プロレスはみんなでつくる。

いつも思うことだが、今日の引退試合は特に思ったのだ。

プロレスはみんなで作るものだということ。

引退試合が決まってから2ヶ月間ぐらい飯塚選手は最後まで一言も発していない。

でも引退試合は大いに盛り上がった。

なぜなら他の選手が話題にしてくれるからだ。

そしてそれをファンが話題にしてくれるからだ。

天山選手が先頭をきって盛り上げてくれたし、タイチ選手や鈴木選手もいろいろ策を案じてくれた。

オカダ選手や矢野選手も頑張ってくれた。

真壁選手も大いに語ってくれた。

メインイベントには野上アナが駆けつけてくれた。

最後空っぽのリングにファンが大イイズカコールを贈ってくれた。

関わった人全員がプロレスを作っている感覚がある。

これは他のエンタメにはない感覚だと思う。

プロレスはやっぱり面白い。

 

寡黙で実直、33年変わらない飯塚高史の真実。

最後は友情タッグを裏切り、タイチ選手の言葉に耳を傾けず、鈴木選手のテンカウントゴングも無視して退場し、ファンのイイズカコールに戻ってくることもなかった。

いつもと同じように。

飯塚選手にとって、友情タッグも、鈴木軍も、もしかしたら怨念坊主でさえ、大した問題ではないかもしれない。

自分の信じた寡黙で実直な飯塚高史のプロレスをリングの上で表現することだけ。

ただ、それだけだ。

33年間、自分のプロレスをしてきただけなのだ。

誰かに何かを言われたところでそれは変わらない。

引退試合のあの一瞬を除いては。

 

しかし、飯塚選手が新日本で戦った33年の歴史はとてつもなく重い。

新日本の歴史は全部で46年だ。

飯塚選手が知らない新日本はたったの13年。

新日本のあらゆる歴史を体感してきた飯塚選手の引退はとてつもなく重い。

どんな時も新日本の歴史に寄り添っていたのだ。

激動期の新日本も、暗黒期の新日本も、復活期の新日本も、寡黙で実直に支えてきた。

サンボのチャンピオンと異種格闘技戦を戦った飯塚選手。

J・Jジャックスでアイドル感を醸し出した飯塚選手。

UWFインターとの対抗戦で勝てなかった飯塚選手。

猪木からの刺客を魔性のスリーパーで絞め落とした飯塚選手。

天山選手を何度も救出して友情タッグを結成した飯塚選手。

裏切りに裏切りを重ねた狂人の飯塚選手。

全ての時代で一度も新日本の最前線に行けなかったのは悔しいが、全ての時代で自分のプロレスを戦い続けたことは誰よりも賞賛されていいはずだ。

 

飯塚選手が新日本のリングで復活することはありえないだろう。

頑なにまで自分のプロレスを貫き通すレスラーが引退を撤回するなどありえない。

できることならどんな形であれ、また新日本と関わってほしいと思うが、とにかく今は感謝の気持ちでいっぱいだ。

昔、柴田選手が新日本に出戻った時にリング上で棚橋選手に言った言葉がある。

それをそのまま飯塚選手に贈りたい。

「新日本を守ってくれてありがとう」

 

ブログを書くときのお約束を一つだけ決めている。

レスラーの名前には見出し文を除いて、必ず「選手」をつけることにしている。

時に批判的な記事も書いてしまうが、レスラーに対してのリスペクトを忘れないために必ず「選手」をつけている。

たまに忘れちゃうけど。

でも飯塚選手に対してはもう「選手」はつけない。

 

飯塚さん、長い間本当にお疲れ様でした。

出典:新日本プロレスワールド

 

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