出典:新日本プロレスワールド

考察

今を生きるケニー、未来を見つめる新日本。ケニーの言葉から考える新日本プロレス。[東スポインタビュー]

投稿日:

 

完全に飯塚ロスで引きこもってしまい、新日本の出来事を全部スルーしてしまいました‥。

また1からがんばろう‥。

さて、ネット上でも話題になっていたケニー・オメガ選手のインタビューについて書こうと思います。

あの東スポのインタビューで、個人的にはいろいろな事柄がすごく腑に落ちましたね。

ケニー選手はAEWで頑張って、新日本は新日本で頑張ればいい。

無理に交わる必要はないと思います。

 

経営・マッチメイク・レスラーが三権分立している新日本。

東スポでケニー選手の独占取材。

いろいろモヤモヤしていたことをハッキリ言ってて、もはや気持ち良さすら感じました。

まずは、ケニー選手が新日本とAEWを比べて、AEWの方が優れている旨の発言をしているところです。

ケニー:この業界には政治的な部分があって、例えば新日本がルチャの団体と仕事をするのはなぜかCMLLだけ。その理由をちゃんと分かる人間がいるのか? それは“背広組”だけの問題だ。AEWは「選手イコール会社」だからそういう考えはない。もしやりたいことが一緒の団体があるなら一緒にやりたい。

引用:東スポWEB

まさに、ここが新日本とAEWで大きく違う点ですね。

過去にAEWについての記事を書きました。

黒船襲来!世界を変えるAEWの革新性に、新日本は立ち向かえるのか!

続きを見る

この時にも書きましたが、AEWはオールエリートレスリング、名前からして全ての優秀な選ばれしレスラーたちの団体です。

人種、国籍、団体など関係なく、エリートの名のもとに世界中のすべての優秀なレスラーが集う団体、それがAEWであり、レスラーの理想の団体なんだと思います。

AEWは新しい団体ですから、各プロレス団体の歴史や政治を気にすることなく、インターネット社会のようにフットワーク軽く、誰とでもつながることができるのでしょう。

 

ただ、あまりに理想論すぎて、ちょっと怖いですね。

ケニー選手はAEWは「選手イコール会社」って言っています。

しかし、日本のプロレスの歴史を紐解くと「選手イコール会社」のプロレス団体ってなかなかうまくいかない印象です。

プロレス団体の運営において、大事な3つの要素は「経営」「マッチメイク」「レスラー」だと思っています。

マッチメイクを司るマッチメイカーというのは名目上、勝敗を含めたマッチメイクや年間のストーリーラインを考えるクリエティブな人たちだと思ってください。

猪木さんの時代はこの3つを全部一人でやっていたと思います。

もちろん専門の人たちはそれぞれいたのでしょうが、創業者の猪木さんはこの3つの決定権を持っているため、自分の意のままにプロレスを操ることが可能だったと思います。

そうなると、振り回される人たちに不満が出てきたり、長期的展望に立ってストーリーを動かしていくことが出来ません。

さらに、猪木さんの時代から長州さんや闘魂三銃士の時代に移ると、今度はマッチメイカーとレスラーが結託したり、経営の背広組とレスラーが結託したりして、いろいろな派閥を作り、結果的にそれぞれがみんな「全日本」「ゼロワン」「WJ」とバラバラに独立していくという最悪な事態になりました。

猪木さんという独裁政権が終わった後に、今度は各派閥で利権争いが起ってしまったような感じだと思います。

歴史小説みたいですね。

ちょうど最近出た下の記事では蝶野さんが分裂の時代の頃について話しています。

 Yahoo!ニュース
蝶野正洋が振り返る平成プロレス 武藤と橋本の離脱はアリストトリストの影響?(...
今回は自分とともに闘魂三銃士と呼ばれた橋本真也選手と武藤敬司さんの新日本プロレス - Yahoo!ニュース(デイリースポーツ)

レスラーはみんな自分が勝ってトップの扱いを受けたいのは当然なので、そこを制御する必要があります。

 

そこでこの「経営」「マッチメイク」「レスラー」というプロレス運営の三権分立が必要になってきます。

現在の新日本はこれがうまくいっていると思います。

経営のトップはハロルド・メイ社長です。

生え抜きではなく、外から木谷オーナーが連れてきたスーパービジネスマンです。

昔はここをレスラーがやっていたので、どんぶり勘定でハチャメチャな時代がありました。

マッチメイクは外道さん一人でやっているわけではないでしょうが、海外インタビューを聞く限り基本的な責任者は外道さんということで良いと思います。

外道さんは選手としては隠居状態なので、マッチメイクに自分の欲をからめることはありませんし、外道さんもまた新日本の歴史の外からやってきた人です。

経営者とマッチメイカーが生え抜きではないので、今までの新日本の利害関係が無いのも良かったのではないかと思います。

 

このプロレス運営の三権分立の立場があやふやですと、レスラーはマッチメイカーに文句を言うでしょうし、経営はマッチメイクに口を挟みたくなります。

それぞれの立場の人間がそれぞれの立場の仕事を信頼していないとプロレス団体はうまく回らないんだと思います。

言葉で言うのは簡単ですが、プロレス団体の運営は実際にはとても難しい舵取りをしているのだと思います。

 

結局何が言いたいのかというと、ケニー選手の「選手イコール会社」って言う考え方はとても理想的なのだけど、団体運営になった時にいろいろな歪みが起きて、選手がバラバラになっちゃう可能性を限りなく秘めているのではないかなと思っちゃいます。

特に新日本の場合、暗黒の歴史の反面教師として三権分立体制ができているような気がするので、「選手イコール会社」が必ずしも正しいわけではないと思います。

しかし資金が潤沢にあるAEWは、不満の口に札束を突っ込んで黙らせることもできるでしょうから、なんとかしてしまうかもしれませんけどね。

 

 

プロレスに関わる全てをやりたいケニー。

もう一つ新日本が女子部門を採用していないことへの不満を述べてますね。

まあ、新日本への不満というより、AEWの素晴らしさを語っているのでしょう。

 ケニー:もちろん。今の時代において、新日本がミスしていると思うのは、女子が試合に出られないことだ。昨年6月に俺が関わった(格闘ゲームのイベント)「CEO×NJPW」(フロリダ州)では、女子の試合を1つ入れたくて新日本に提案した。結局「それは新日本ではない」と断られた。今はもう2019年だ。女子と男子は同じステージに立てると思っている。そして俺がいいと思っている女子選手はほとんど日本にいる。

引用:東スポWEB

新日本が女子部門をやるかどうかという問題は、正直どっちでもいいと思うんですが、どちらにしろこれは新日本の経営判断の範疇であり、1レスラーであるケニー選手が口を挟む話ではないな、って言うのが第一印象です。

新日本が「ルチャでCMLLとしか提携していない」とか、「女子部門をやらない」とかの問題は経営にかかわる話であり、そこをつっこみたいということは経営というか、ケニー選手はレスラーを飛び越えて、もうプロデューサー目線なんですね。

 

過去の記事でも書いたんですが、個人的に2016年と2017年のケニー選手のプロレスは面白かったのに、2018年になるとケニー選手にあまりノレなくなってしまいました。

最終戦で消えた棚橋弘至とイデオロギー闘争。2018年のケニーにノレない理由。

続きを見る

ケニー選手の2018年は、ゴルラヴァの復活やIWGP戴冠という偉業はあったものの、ジ・エリート内の抗争や物議を醸した3WAYのIWGP戦など、かなりマッチメイクに注文をつけていた印象を受けます。

つまりケニー選手が新日本で過ごした最後の2018年は、「経営」「マッチメイク」「レスラー」の三権分立制度を覆し、全てに関わってしまったことで、かなり一人よがりな状態になってしまい、ノレなくなったんだと思います。

例えば、3WAYのIWGP戦がいい例です。

ケニー選手としては新しいことをやりたかったわけですが、ストーリーの流れ的におかしい点がいっぱいあり、1試合という点でしか考えていないケニー選手と、1年間という線で考えているマッチメイカー外道さんとの違いが悪い方向で出てしまった試合だったと思います。

逆に新日本がよくここまでケニー選手に自由にやらせたなって思っちゃいますね。

過去記事で3WAYのIWGP戦のモヤモヤついても書きましたが、今回の東スポインタビューでようやく全てが繋がった気がします。

18.10.8両国、伝説にならなかった歴史的な3WAYマッチ

続きを見る

一方、プロレスに関わることを全てをやりたいケニー選手はスーパーアイデアマンであり、優秀なビジネスマンとも言えるかもしれません。

ここまでのアイデアがあるレスラーはおそらく新日本には一人もいないでしょう。

そういう意味ではとても頼もしい選手ではありますが、同時に新日本では扱いが難しくなってしまった選手でもあったと思います。

ケニー選手の退団はある意味、猪木さんレベルのプロデューサーになってしまったケニー選手を、新日本が扱えなくなった結果と言えるのではないでしょうか。

 

お金に興味はないが、お金がないとAEWの理想は実現できない。

AEWの潤沢な資金について聞かれた時のケニー選手です。

 ケニー:それは全然関係ない。もう俺もいい大人なんだけど、お金のためにやっていない。自分のプロレスを通じて、見る人の人生を変えたい。うつ病の人がプロレスを見るとうれしくなって自分の問題を忘れられるとか、そういうことの方が重要。お金や自己実現のために戦うレスラーも多いけど、俺は美しいアートを見せたい。

引用:東スポWEB

ケニー選手自身はお金よりもプロレスの芸術性に重きを置いてるようですが、AEWに資金がなかったらエリートな選手を世界中から集めることはできません。

お金のためにやっているわけではないけど、お金がないと理想のプロレス団体はできない。

レスラーとしての意見かもしれませんが、副社長としては今一つの回答だったと思います。

 

トップダウンな新日本、ボトムアップなAEW。

「世界を変える」ことについて聞かれたケニー選手が答えました。

ケニー:これまでの業界では、まるで会社のスタッフやオーナーがファンに対し「これがプロレスですよ」と上から教えてるような風潮があった。AEWは違う。選手たちがそれぞれ大事にしている心からのプロレスを見せることができる。

引用:東スポWEB

まあ、これも考え方の違いでどちらが正しいとは言い切れないですね。

新日本の場合は三権分立体制で各専門の人がベストを尽くすことで、新日本プロレスという一つのパッケージを見せることに力を入れています。

これがケニー選手にしたら、トップダウン方式の古い企業スタイルに見えたり、レスラーが蔑ろにされている印象を持ったかもしれません。

でも先ほども言いましたが、レスラーが経営やマッチメイクに入ってこないように三権分立がしっかりしているからこそ、できることもあるわけで、これは新日本の歴史からしたらむしろ進化の証なんですけどね。

一方、AEWは「選手イコール会社」だから、「選手がそれぞれ大事にしている心からのプロレス」を見せることができる、と。

AEWの全貌はまだ見えていないので何とも言えませんが、レスラーからのボトムアップ方式でプロレスの理想を追求しようって感じでしょうか。

しかし、レスラーの意見を全部聞いたら、どこかでまとまらなくなるような気もします。

単発興行ならどうにでもなるでしょうが、年間で運営していく時にどのように舵取りしていくのか。

難しいところですが、ケニー選手の腕の見せ所でもあります。

 

今を生きるケニー、未来を見つめる新日本。

最後にこの一文。

 ――AEWへの移籍を決めた

ケニー:もちろん日本は大好きだよ。まだ住んでるし、好きなプロレスも日本にある。でも新日本で今の自分ができることがあまりなかった。

引用:東スポWEB

新日本でできることがあまりなかったということですが、それはしょうがないでしょうね。

新日本はレスラーとしてのケニー選手に期待しているけど、ケニー選手の方はもうプロデューサー目線になっているので、需要と供給がうまく噛み合っていません。

やはりケニー選手は副社長としてAEWにいくのがベストですし、新日本はケニー選手をキッパリ諦めて今まで通りやっていけばいいと思います。

 

あと、現時点で新日本とAEWで大きく違うところがもう1点あると思います。

AEWは新しい団体だから当たり前なんですが、選手を自前で育てているわけではありません。

今後AEWで新しい選手を育てるかもしれませんが、現時点では育てていないと言っていいでしょう。

選手を育てるという観点があるかないかでプロレス団体の運営は大きく違ってくると思います。

新日本にとって各レスラーを輝かせるのは大事な仕事ですが、それと同時に5年後10年後も生き続けるためにヤングライオンを育てていくのも同じくらい重要な仕事です。

つまり今のプロレスと未来のプロレスを同時並行で作っていくことが要求されます。

下記の「2011年の棚橋弘至と中邑真輔」って言う名著の中で、棚橋選手がこんなことを言っています。

ずっと新日本を見てきて、みんなトップになりたい選手の集まりだから、仕方ない部分もあるんですけど、礎になる選手が一人もいませんでしたね。(中略)橋本さんも武藤さんも、世代交代をやる前に新日本を出てしまったし、長州さんも藤波さんもそうだった。(中略)ボクはもしも自分の時代に盛り返せなかったら、次の世代のための礎になる覚悟があります。それが神輿に担がれる者の義務だと思うんです。

引用:2011年の棚橋弘至と中邑真輔

みんな自分がトップのままでいたいから、新日本のトップレスラーは世代交代の時期になると出て行ってしまうと。

トップレスラーがちゃんと次の世代のために負けること。

だからこそ、世代交代が健全に行われ、新しいレスラーがまた新日本を動かしていくことになると。

プロレス団体の運営において、レスラーの世代交代も大事な仕事。

これを踏まえて、2018年の年末のイデオロギー闘争の中で棚橋選手がこんなことを言っていました。

─それは、先ほど言っていた団体や業界を支える責任ということでしょうか?

棚橋:ケニーがいちばんダメなところがそこなんですよ。あいつは自分のことしか考えてないから。試合も「俺って凄いだろ! 悔しかったら俺を超えてみろ!!」って感じなんですよね。それでは対戦相手の光も消してしまうし、後に続く者たちに対しての教えもない。いうなれば、ケニーの歩いた道はすべて焼け野原になってしまっているんです。

─真の王者であれば、みんなが進むべき正しい道をつくらなければならないと。

棚橋:そう。僕はこれまでエースとして、常に後進のために道を創ってきたという自負がありますよ。ベルトを巻いていた時はなおさらね。

引用:ローリングストーン誌WEB

これを読んだ時は、そこまで言わなくても‥って思いましたが、今読むと結構なるほどって思えます。

先の過去記事でも書きましたが、ケニー選手はベストバウト至上主義の人だと思っています。

今できうる最も面白い試合を作る、これがケニー選手のプロレスだと思います。

でも棚橋選手のいうチャンピオンの責任とは、後進のために道を創ることにあると言います。

これを先ほどの「2011年の棚橋弘至と中邑真輔」の言葉を踏まえて考えると、奥が深い。

実際にこの間、棚橋選手からジェイ選手にベルトは移動しました。

 

常に未来を見つめながら今を見るというのがプロレス団体である新日本の責任。

しかし、ケニー選手には後進の育成という概念は見受けられない。

それはケニー選手が団体を渡り歩いてトップにのし上がったレスラーであり、つねに自分を磨き続けてきたからに他ならないからだと思います。

だからこそ、ケニー選手はベストバウト至上主義であり、AEWもおそらくそういうことなんだと思います。

先ほども言いましたが、1試合という点で考えるケニー選手と、1年間という線で考えるマッチメイカー外道さんとの違いが、そのままAEWと新日本の違いのような気がしてなりません。

そもそもケニー選手と新日本は最初から立っている場所が違っていたのかも。

いずれにせよ、ケニー選手と新日本は別れる運命にあったのであり、それは必然だったのだと思います。

 

更新情報はTwitterから!

-考察
-, ,

Copyright© ボマニア|プロレスにもぐる! , 2019 All Rights Reserved.